田町について

東京に来て2年半が経った。この小さくて広い東京にも「嫌いな街」が増えていった。

田町は新卒で入社し勤務していた職場の最寄駅である。本当に、うんざりするくらいに磯臭くて、どうにもこうにも吐き気がする街だった。
ドブのように濁った川が交差しており、そこから立ち上る海水の匂いと、仕事に対する嫌気で何度も吐いた。吐けばじわりと涙が滲み、それが虚しくて、また泣いて、その勢いで吐いた。タバコをガバガバと吸い、酒を飲み男と遊び呆けて騙し騙し働いていたが、あっさり限界がきて辞めた。残ったものは恨みや妬み、わずかな貯金と吐き癖からくる慢性的な食道炎、あとそれから精神疾患がしつこくて苦労した。辞めて半年間は寝込んだ。そういえば田町には当時気に入った男が住んでいたマンションもあった。一度その男の家でセックスして、それっきり会わなくなった。何が気に入っていたのか、顔も職業も出身大学も覚えていない。もう、一生歩きたくない街、田町。