佐々木のこと

大学生の頃、何かの飲み屋か知り合いの紹介で知り合った男友達がいる。佐々木という。


もう5.6年の付き合いになるのだが、その出会いのことを覚えていない。もしかしたら、出会い系だったかもしれない。本当に忘れた。

 


なんやかんやと、忙しい合間を縫っては定期的に安居酒屋で金儲けの話や下世話な話ばかりをしていた。

 


佐々木と会う時は小学生の頃からの友人に会うような、懐かしくて嬉しくて、悪巧みやイタズラを一緒にしているような気持ちになった。

 


この日も、いつものように280円のつまみを箸先で遊ばせながら、酒をぐいぐい飲んで、

佐々木の元恋人のことや、これから売れるバンドのことや、SNSでどう金を稼ぐかなど、バカみたいに喋り捲っていた。

 


佐々木はウーロンハイを、私はレモンサワーを互いに10杯ずつくらい飲んで、

いよいよ頭と呂律が回らなくなったところで、

唐突に「昔あんなに好きだったのに」と言われた。

へェとかフム、とかよくわからない合槌をうって、

よくわからない言い訳をして、会計をした。

 


ヘラヘラと笑って、

さっきまで馬鹿みたいに喋っていたのに、

手を繋いで、

店を出て、

相変わらず歌舞伎町の夜は鬱陶しいくらいに賑やかで、

ゴミゴミとした人の間をぐんぐんすり抜けで、

改札前で解散した。

 

友達は楽でいい。

理由が無くなれば会わなくていい