まみちゃんへ1
まみちゃん、生きていますか。
ふとあなたのことを思い出したので書きました。
大学二年時にそこそこ大きな不祥事をしでかした私は三年で他大学に編入させられた。
学部こそ分野は一緒だったものの、必修授業がガバガバに抜けた状態だったので後輩(もはや先輩なのか)に混じって授業を受けていた。
その仲間がまみちゃんだった。
まみちゃんは実家暮らしのお嬢様でいつもブランドのバッグを持ち歩き、彼氏の話ばかりをしてきたので適当に笑って聞いてあげていた。
まみちゃんはすごく頭が悪く、次から次へと男に騙された。泣いて、ほかの男にすがり、それでまたその男に騙されていた。本当に頭が悪い女の子だった。
ある日、まみちゃんが遅刻して授業に現れた。私たちはいつも最後列の一番日差しが届かない席に座っていた。
「ちょっと見てくれん?」
三重弁で人懐っこく話すまみちゃんは本当に頭が悪そうで、そんなところが好きだった。
「どれ?」とまみちゃんの方を振り向くと
服の首元を摘み中を見るように指示してきた。えっ何。
「いいからちょっと見て、一大事やん」
仕方なく覗き込むとまみちゃんはブラジャーをずらした。
「えっ……まみちゃん、乳首………」
…………
……
「…………なんか長なってるやん」
まみちゃんは男に金を貸すためにオッパブで働き出したようだった。
毎晩おやじに乳首を強烈に吸われ噛まれをし、どんどん伸びていった。
「乳首立つ時も根元から立たん。こうなる」
そう言って両手の人差し指を曲げた。本当に滑稽だった。教授に騒がしいからそこの二人出て行けと言われたのでまみちゃんだけが出ていった。ノートよろしく、と肩を叩かれたのだ。
まみちゃんはその後も男のために乳首を売っていた。可哀想になったのと、金に困って無かったので、返ってこないつもりで10万貸した。もちろん返ってこなかった。
まみちゃんは世界を旅する中卒の男と付き合っていた。よくわからないネットビジネスで生計を立てきれない彼のために必死に働いた。挙げ句の果てには自分もそのネットビジネスにハマり、金が永遠と無駄に必要になるサイクルを全力で回していた。
いよいよ私もそのビジネスの勧誘がきたので今後その話を私にしたら縁を切ると言うとあっさりしてこなくなった。まみちゃんは友達がすごく少ないのだ。私を失ったら大学卒業すら危うい。
卒業して、まみちゃんとはすっかり疎遠になった。まみちゃんも卒業できた。お互いの協力があっての卒業だった。
私がアルコール依存症で手が震え、震えるというかどうにもこうにも手が“バイバイ”をしているように動いてしまうようになって、ルーズリーフが嘘発見器みたいな波を書いてしまうようになってからは、よく板書をコピーさせてくれた。ありがとう。
私が避妊に失敗した時、何故か大量に持っていたピルを譲ってくれたりと大変にお世話になった。ありがとう。
まみちゃん。生きてますか。
死んでても面白い。